十二月中旬、インドを訪問しました。現地では私が経済産業大臣政務官だった時に秘書官を務めてくれた豊福氏が一等書記官として働いているので一度ぜひ訪れてほしいとの要請があり、また私自身がまだインドという大国を訪れたことがないこともあって今回の訪問となりました。
インドと言えばやはりタージマハルでしょう。この遺跡は世界遺産になっており是非とも観たいと思っていました。現地に行きますと白い綺麗な大理石でイスラム教のドームが形成されていました。亡くなった自分の王妃のために作られたお墓ですが、二十年間、毎日二万人の労働者を使って建設されたため、国家財政が破綻したという話です。そしてそのタージマハルを作った技術者の石職人には二度と同じものを作らせないために腕を切り落としたという話もありました。非常にむごい話ですがタージマハルはインド文化を代表するものでしょう。しかしムガール王朝のイスラム文化だけがその名を世界に残しているというのは、ある意味歴史の皮肉なのかもしれません。
さて、今までの私のインドに対するつたない知識と現地での現実との比較において、今回はいくつか驚いた点がありました。
一番目は、これは多少わかっていたことですが、人口十一億人という実感です。中国の十三億と並んでまさに世界の人口大国だとひしひしと感じました。
二番目は、それだけの人口を抱えているにもかかわらず、食料が十分足りているということです。その理由は、インドは中国の半分程度の国土ではありますが、中国と違ってほとんどの地域で耕作が可能だという点にあります。したがって農産物が潤沢に生産できるわけです。経営の仕方は必ずしも効率的ではありませんが、それを補って余るほどの生産力があり、一部の農産品の輸出も行えるのだそうです。
三番目は、治安が良いという点です。その良さは信じられないくらいのもので、財布をホテルに置いておいてもなくなる事はなく、また窃盗は時々あるとしても殺傷事件はかなり少ないとの事でした。もちろんパキスタンに隣接する北部カシミール地方の治安は必ずしもいいものとは言えませんが、少なくともニューデリー市内ではまったく安全といって問題ないでしょう。
四番目は、日本にはノラ犬がいますがインドにはノラ牛がいるということです。ヒンズー教徒が八割を占めるインドでは、牛を食べたり殺したりはしません。よって牛達は安心して大通りを闊歩出来るわけです。そしてその目は、殺される心配がないからか、安堵感を通り越してトロンとしている感じで、いかにもひ弱な印象がありました。ただ、不思議なのは、牛達は食べるものが豊富な田畑や野原の草を食べに行かず、街中で人々と一緒に暮らしているということです。人々が牛に対して食事を与えることもあるのでしょう。しかし家畜として飼っている牛以外は痩せ細っているのも現実でした。いずれにしろ動物愛護という観点から見れば、かつて日本の徳川時代に将軍綱吉が生類憐みの令を出しました社会がこの二十一世紀においても実現しているわけです。これには驚きであると同時にその実現が可能であるということを知らされました。
インドの国民生産は全体で日本の国民生産の十分の一であり、一人当たりのGDPでは約百分の一になります。ただ資源の豊富なこの国では、将来、生産が十倍になればGDPでは完全に日本を追い越し、中国と肩を並べる存在になるでしょう。
日本とインドの関係はとても希薄です。航空機の往来の数は中国の五十分の一という話も聞きます。しかしながらインドが日本に対してどう思っているかといますと、第二世界大戦後の東京裁判についてインド人のパール判事が東京裁判のおかしさを鋭く指摘し日本を弁護してくれました。またこの話は知らなかったのですが、終戦直後、敗戦国の日本に対して鉄鉱石を売る国がほとんどなかった時に、インドは独立戦争での日本の恩を感じて日本に貴重で優秀な鉄鉱石をどんどん供給してくれ、現在に至るまでその関係は続いています。ある意味では日本のファンであり友達です。と同時に、インドはマーケットと見ても大きなものであると言えます。インドとの関係をもっと深くし、経済発展に日本が役立つとことが大事であると言えるでしょう。
中国の経済成長につれて、中国は外交上の問題(靖国問題等)をはじめ、石油資源開発などにおいて日本に対し厳しい態度に出ています。そこで中国の隣のインドと日本が親密な関係を築くことが、日本の安全のため、また外交上のために必要なことです。我々国会議員の中でインド国会議員連盟というのはあるのでしょうがあまり聞いたことがありません。その様な現状である以上、国会活動の中において対インド関係の協力をこれからも推し進めようと思いました。
いずれにしろ日本は対インドODAを近年急速に増やしてきました。今後は中国を少なくしインドを増やすことで日本の外交や国益に役立つODAの使い方を今後も注意深く見守っていかなければならないと感じた次第です。
|
|