ノルウェー・スウェーデンを訪問して

1 はじめに
 今年の夏はまるで日本が熱帯気候になったかのような異常な暑さが続きましたが、皆様お変わりはありませんでしょうか。

 さて、私は厚生労働大臣政務官として、福祉や医療などの問題に取り組んでおります。先の通常国会では年金改革法が成立したところですが、少子高齢化が急速に進行する我が国では、次の課題も待ったなしで山積しています。喫緊の最大の課題は、これから10年、15年後にいわゆる団塊の世代が引退して高齢期を迎えるときに、国がどのような介護保険制度を整備するのかという問題です。平成12年4月から介護保険法が実施されているわけですが、来年4月で介護保険法が施行されて来年で満5年となります。介護保険法では施行後5年をめどに制度の見直しをすることが定められていることから、これまで厚生労働省の審議会において、4年間の介護保険の実施状況の検証と、今後の見直しの方向性について検討し、7月30日には「介護保険の見直しに関する意見」がまとめられています。そうした中、私は福祉先進国と言われる北欧のノルウェーとスウェーデンの実情を視察することを目的に、去る8月14日から20日の7日間、両国を訪問し、両国の厚生労働省関係者との意見交換や高齢者介護施設等の視察を行ってまいりました。両国の印象も含め、ここでその視察報告をさせていただきます。


2 両国の概況

 ノルウェーとスウェーデンは、共に一人当たりの国民所得が高く、福祉先進国として有名です。デンマークとともにスカンディナビア三国とまとめ手語られることも多く、毎年12月にはノーベル賞の授賞式で世界中の脚光を浴びる(平和賞はノルウェー・オスロにて、その他の賞はスウェーデン・ストックホルムにて授賞式が行われます。)など、多くの共通点があります。

 しかし、一方、ヨーロッパにおける大きな政治問題であるEUへの加盟という点では、スウェーデンは加盟していますが、ノルウェーは加盟していません。また、鉄鉱石などの天然資源はあるものの、基本的には交易や技術立国として発展してきたスウェーデンと、厳しい気候と国土を持ちながら、北海油田の石油資源のおかげで今やスウェーデンをしのぐ生活水準を誇るノルウェーとでは、国民性や政治経済についての考え方にも違いがあるということです。

(1)ノルウェーの概況
(石油基金の恩恵を受けた高水準の国民生活)

 ノルウェーは、デンマークやスウェーデンの支配下であった時代が続き、1905年にようやくスウェーデンから独立した若い国で、来年建国100周年を迎えます。また、南極点に初めて到達したアムンゼンや北極探検をしたナンセンなど冒険心あふれる先人が生まれた国でもあります。 国土は山がちで3分の2が不毛の地であり、耕作地は3%ほどしかありません。しかし石油・天然ガスが産出され、その多くを輸出して大きな収入を得ており、サウジアラビア、ロシアに次ぐ世界第3位の石油輸出国です。人口はわずかに450万人、石油・天然ガスと水産業に依存した産業構造ですが、国民一人当たりのGDPは四万八千jと、わが国(三万三千六百j)以上の高い生活水準を維持しています。

 しかし、将来的には石油収入の減少と人口の高齢化による社会保障費の大幅な支出増加が見込まれています。このため政府は1990年「政府石油基金」を創設し、石油収入による財政黒字分を積み立てています。当初、わずか約2.8億ドルからスタートした石油基金ですが、2003年末には約1,200億ドル、約13兆円に達しています。この基金は将来にわたって価値を維持するため、国内外の株式、債権で運用されていますが、日本の株式市場の好調なども要因となり2004年の第1四半期では2.9%の運用益を計上しています。
(オスロ郊外のフィヨルド)


(ノルウェーの高齢者政策)

ノルウェーの高齢者施策は、大きく分けると日本と同様に全国民が強制加入する年金制度と、市が運営する高齢者福祉制度があります。ノルウェーは日本の消費税に当たる付加価値税が24%と高率ですが、こうして集められた国家予算2283億クローネの37%が年金給付を中心とした社会保障給付に当てられています。

 年金制度については、1967年から実施されている国民保険法があり、日本と同様に、全国民が保険料を支払い、その時々の高齢者の年金給付に当てるという賦課方式という原理で運営されています。しかし、自営業者、サラリーマンに関わらず同じ制度に加入し、基本的にすべて所得に応じた保険料を支払う点で大きく異なりますが、自営業者とサラリーマンとでは保険料が異なっており、完全に同一の内容とはなっていません。保険料はサラリーマンの場合は本人が所得の7.8%を支払い、企業側は14.1%を支払います。自営業者の場合は所得の10.7%ですが、年金所得については保険料率は3%となっています。

 これに給付費の約3分の2程度の政府拠出金が加えられて年金給付が行われています。年金給付は、所得に関わらず加入年数に応じて給付される「基礎年金」と、所得に比例して給付される「付加年金」の2種類があります。日本では給付は基礎年金の場合65歳、厚生年金などの場合は原則62歳から始まるのと比べると遅いですが、原則として67歳から始まります。「基礎年金」は、40年保険料を支払った場合、若い頃の所得に関わらず年間56,861ノルウェークローネ(約85万円)が支給されます。

 一方、高齢者介護については「地方自治体における保健サービス法」が1984年に実施され、日本で言えば市町村に相当するコミューネが老人介護施設の設置運営と在宅サービスの供給義務を負う仕組みとなっています。いわば日本の介護保険制度導入前と同じような仕組みであり、すべてのサービスを税金で賄う一方で、高齢者がどのようなサービスを受けるかについては基本的にはコミューネが決定する仕組みです。介護費用は基本的に地方自治体が負担していますが、入居者にも一定の自己負担を課しています。入居者の自己負担は、年金収入の75%、その他の利子収入の85%となっています。

 ノルウェーでは合計特殊出生率が1.8程度と高水準を保っています。このため高齢化の進展は、他のヨーロッパ諸国ほど深刻ではありません。しかし、それでもやはり将来の高齢化は大きな問題ととらえられており、老人ホームや介護付き住宅の不足が問題となっているそうです。


(2)スウェーデンの概況
 (北欧の伝統国)


 スウェーデンは、国土の54%が森林、20%が湖沼・河川となっており、石油収入はありませんが、ノルウェーよりも高い25%の付加価値税を課しております。人口は約900万人と日本の10分の1以下ですが日本の約1.2倍の広さの国土を有しています。ノルウェーのような石油資源はありませんが、VOLVOやSAABといった伝統的な自動車産業のほか、近年ではNOKIAなどの情報産業も集中しておりIT国家として経済成長を続けています。

 また、有名なノーベル賞は、ダイナマイトの発明者であるノーベルの遺言によって1901年に創設され、ノルウェーで選考される平和賞を除く物理学賞、化学賞、医学生理学賞、文学賞、経済学賞がスウェーデンで選考され、毎年12月10日に授与され世界の注目を集めます。ノーベルの他にも、セルシウス(摂氏温度計)、リンネ(植物分類学)など世界的な発明・発見がなされており、現在も高い技術力を誇っています。
ノーベル賞受賞者の晩餐会が開かれるストックホルム市庁舎)


(スウェーデンの高齢者政策)

  スウェーデンの社会保障もノルウェーと同様に、国が責任を持つ年金制度と地方自治体が責任を持つ高齢者介護からなります。高負担・高福祉の国として有名で、日本の消費税に相当する付加価値税はノルウェー以上の25%ですが、食料品などは12%に止めるなど、中低所得層に過重な負担とならないような配慮がなされています。

 年金制度は1999年に大改正が行われ、日本の厚生年金に相当する所得比例年金と、貯蓄のように積み立てていく積立年金に、税金で賄う最低保障年金という3つの年金を組み合わせる仕組みへと変わりました。経済成長に応じて自動的に給付を調整する仕組みを取り入れている点など日本の年金制度と共通の点もありますが、全額税財源の最低保障年金を導入していたり、自営業者・サラリーマンを問わず同一の年金制度に加入しているなど、大きな相違点もあります。

 保険料は所得比例の年金分として16%、積立年金として2.5%が労使折半で徴収されます。所得比例年金は61歳以降給付を受けることができますが、最低保障年金は65歳以降に給付が受けられます。最低保障年金は受給者の所得によりますが、最高約8万クローネ(約112万円)が支給されます。

 また、高齢者介護については、1992年のエーデル改革によりサービス実施の権限と責任がコミューンと呼ばれる市へと移譲されました。そのためノルウェーと同様に市が運営主体となって税財源によって介護サービスを提供しています。サービスの種類は日本と同様にホームヘルプ、デイサービス、訪問看護といった在宅サービスや、ナーシングホーム、グループホームといった施設サービスなどが整備されています。施設サービスは法律上「特別な住居」と位置付けられており、入居する高齢者にとってはあくまでも「住居」として扱われます。したがって原則として入居費などは個人が負担します。

 スウェーデンでは65歳以上高齢者の割合は17%程度で安定していますが、長寿化に伴い80歳以上の高齢者人口が増加しており、今後、痴呆対策などの充実が求められているという話でした。



3 視察の記録
(1)ノルウェーでの視察

 東京からロンドン経由で首都オスロに到着したのは夜の10時でしたが、緯度が高く夏は日が長いため、地平線にはまだ明るさが残っておりました。

 オスロ・ガーデモエン国際空港は、1998年にオープンした新しい空港ですが、ターミナル・ビルは環境にも十分に配慮されており、高い天井や床、カウンターなどに木材をふんだんに使用し、自然の光もふんだんに取り入れた暖かい雰囲気でした。循環型社会を目指すためにも木材を有効活用することが必要ですが、そうした意味で先進的な取り組みをした国際空港です。また、高速道路の防音壁などにも木材を使用するなど、木材利用の活発さが目に付きました。
(木材をふんだんに使用したオスロのガルデモーン国際空港)


 ノルウェーでは、まず、オスロ近郊のバーリュム市にある高齢者施設を視察しました。ノルウェーでは老人ホームの設置運営及び在宅サービスの供給義務は地方自治体(コミューネ)が負っており、老人ホームに入居する方の負担は、年金の75%及び利子収入などがあるときはその収入の85%とのことでした。

この施設には75名まで入居可能な老人ホームと19室のサービス付き住宅があり、デイケアも実施しているとのことでしたが、施設内で見られるお年寄りの数は少なく、広々とした余裕のある運営が窺えました。また、サービス付住宅は、キッチン、リビングルーム、寝室、バスルームと部屋が分かれており、自分の自宅と同じ雰囲気を作っています

(ベルゲル介護施設のトーリル・ローネ所長(左)とベンテ・ルンデン介護局長(バーリュム市)(右)
(生活感のあるベルゲル介護施設の居室)

 午後にはノルウェー社会省を訪問し、ノルウェーにおける高齢者福祉政策の考え方と問題点について説明を受けたほか、アスパーケル社会省副大臣との会談を持ちました。ノルウェーでは、老齢年金については国が責任を持って運営しており、基礎年金の額は、40年加入していた場合、夫婦で年間約170万円ほどとのことでした。また、介護サービスの提供については地方自治体(コミューネ)が責任を負いますが、在宅が原則で、現実に介護サービスを受ける人の8割は在宅であるとのことでした。在宅を原則としている理由は、家に近いところの方が安心感を持て、コミュニティに関わることができて老化防止が期待できるほか、結局は今ある住宅を使う方が安上がりだからとのことでした。お年寄りを家族から離して施設に入れると、会話が少なくなり痴呆が進むと言われていますから、私もこのような考え方に同感です。我が国も施設介護から在宅介護へと転換の進めていますが、まさに世界的な潮流なのでしょう。


(アスパーケル社会副大臣と)

 ノルウェーの社会福祉関係者と話をして印象的だったのは、24%の付加価値税を払うなどの高負担をしてでも、高福祉を実現しようという国民的な合意が形成されているという点と、それでもなお、石油資源が将来減少していくことを見据えて、将来への備えが必要だという認識を政府関係者、介護従事者ともに共有しているという点でした。目先の苦しみに耐えつつ、将来展望を常に描くことが政治の役割でもあります。こうした知性ある認識の積み重ねが必要です。

 ノルウェー滞在中は比較的天候がよく、また、夏期休暇の終わりに当たっていたこともあり、海辺ではクルーザーに乗ったり日光浴に興じたりする人たちを多く目にし、夏を楽しむノルウェーの人たちの様子を観察できました。ノルウェーでは、労働者に6月から9月の4ヶ月の間に18日間の夏期休暇を取ることが法律で認められている上、前年に勤務した企業から年収の10.2%に当たる「休暇手当」が支給され(したがって、新卒であれば手当は支給されない。)、しかもこれが無税であるため、労働者にとってはその期間働いて賃金を得て所得税を納めるよりは、休暇を取得する方が合理的なのです。企業にとっても、従業員に支給しなかった休暇手当は基金に取られてしまうことになるため、休暇を取得させることになるそうです。

 一方で、ホテル近くの国立美術館へ行った際、有名なムンクの「叫び」のほか、バイキングが活躍した様子描いた絵画や厳しい地形や自然の中での人為を描いた絵画を見ましたが、夏のオスロでは感じることができない冬のノルウェーの厳しさと重苦しさの一端をかいま見ることができたと思います。


(2)スウェーデンでの視察

 ノルウェーでの滞在を終え、空路スウェーデンの首都ストックホルムへ入りました。空港から都心へ向かう高速道路では、防音壁に木材が多く使われておりました。森林が国土の54%を占めるので当然かもしれませんが、我が国ではせっかくの森林が木材価格の低迷で有効に活用されていないことに照らしますと、我が国でもノルウェーやスウェーデンのように木材の活用を図っていく必要があると感じました。

 スウェーデンでは、まず社会省を訪問しました。ここでは、高齢者対策と少子化対策について説明を受け、バトリャン分析部長と意見交換を行いました。高齢者対策では、高齢者の社会へのアクセスを向上することを目標としていること。そのためには事務所や商店など人々が集まるところにおける手すりやスペースの確保が必要であるため、助成金は出さないものの建築法の中でアクセスに関する規定を強化させているとのことでした。また、介護サービスについては、施設介護から在宅介護へとシフトしているのは日本と同様ですが、意外なことに、最近ではサービスホームのような在宅に限りなく近い中間的な介護施設が減少傾向にあるということでした。これも在宅介護サービスの充実の賜物なのでしょうか。

 少子化対策については、スウェーデンにおいても出生率の低下を経験していますが、その後回復したという実績があります。特に1999年に出生率が1.5まで低下したことから、政府の委員会を設置し少子化傾向の要因を分析したそうです。その調査の中では、スウェーデンの女性の10人に9人は、出産の前にまず就職して職業人としての地位を確立したいと考えているという結果があり、そうした調査を分析した末、@働き方、A男女平等とB家族政策が重要との結論に達したそうです。つまり女性が働きやすい社会を作れば出生率も上がるという考えです。具体的には幼児保育の充実と両親(特に男性)の有給休暇の取得促進を進めているとのことでした。

 日本では女性の社会進出が進むにつれて出生率が低下していますが、社会に出た女性でも子供が生めるような環境を作ってこなかったことに原因があるのかもしれません。バトリャン部長によると、少子化対策のポイントは出生率の低下傾向が始まったら直に対策を講じることだということでした。つまり、「子供は一人でもいい」という考えが社会に広まってからでは出生率の回復は難しいということなのでしょう。そういう意味では、戦後総じて出生率が低下傾向を続けている我が国の少子化問題の深刻さを改めて感じるとともに、少子化対策がいかに緊急性の高い問題であるかということを認識しました。

 続いてストックホルム市の中心にある、高齢者施設を訪問しました。ここは、サービスホームと痴呆老人を対象としたグループホームが併設されていましたが、施設は市が所有し、運営は入札により選定された株式会社に市から委託されていました。スウェーデンでは介護サービスは市の公営で提供されるのが原則ですが、近年、都市部では民間事業者への委託も増加しているそうです。

 サービス付き住宅の入居者と介護時間は市の福祉局が決め、その介護時間に見合った費用が市から運営主体へ支払われるとのことでした。このような場合、運営主体が介護サービスの質を低下させるのではないかとの懸念がありますが、入居者や家族、また、職員からの苦情・告発制度が整備されており、そのような問題は少ないとのことで、我が国でも施設に対する臨時の立ち入り検査を含め、利用者や行政機関の意識改革が必要と感じました。
(ストックホルムのサービスホームで入居者と交流)

 また、スウェーデン王室のシルビア王妃は福祉活動に熱心であり、その名を冠したシルビアホームという痴呆老人のためのグループホームもあります。今回のスウェーデン訪問では、そのシルビアホームを訪問する機会にも恵まれました。

 シルビアホームの会長であるバルブロ・ベック=フリース博士は老人医学の権威であり、痴呆老人のグループホームの提唱者でありますが、直接お話を伺い、意見交換をすることができました。
(シルビアホームにてバルブロ・ベック=フリース博士と)

 博士のお話では、80歳以上の20%、95歳以上の50%が痴呆になると思われる中で、痴呆の予防や症状緩和の方法を研究していくことが大切であるということでした。そのためには医学面での対応のほか、デイケアなどで痴呆老人に刺激を与えることが重要ですが、実際に痴呆の高齢者と接する職員の対応が肝要なので、職員の養成に力を入れているとのことでした。

 この点については私も非常に同感であり、問題意識を共有することができました。高齢者は話し相手を必要としていますし、そうした刺激がなければ痴呆も進みかねません。「○○ちゃん」などという施設職員の言葉遣いによっては高齢者も会話したがらないという問題もあると聞きます。単なる技術的な教育ではなく、本当に高齢者と文化を共有したり、交換したりできるような心の教育が必要なのではないかという私の考えを博士にもお話しし、意気投合しました。
(バルブロ・ベック=フリース博士と意見交換)



(ドロットニングホルム宮殿)
 滞在したストックホルムは「北欧のベニス」と呼ばれるように、海、湖、川に囲まれた美しい街でした。高層建築を禁止したり、王宮の周りには古い町並みを残すなど都市計画がしっかりしている上、美しい高速道路も整備されたり、芸術的な装飾をこらした地下鉄をつくるなど、新旧の建造物が融合して美しい街をつくっているという印象を受けました。

 福祉先進国という印象が先行する国ですが、このように機能的にも芸術的に充実した社会資本が整備されているということがその前提にあるのかもしれません。


4 おわりに
 今回のノルウェー、スウェーデン訪問で、両国の実情の一端を見ることができました。両国と我が国を比較すると、人口規模が大きく異なりますし、ノルウェーのような石油収入がなく、付加価値税率にも開きがあるなどの違いがあります。また、65歳以上の高齢者率については今や逆転して我が国の方が高い状況にあります。(我が国19.0%、ノルウェー14.7%、スウェーデン17.2%)さらに高齢化率7%から14%に上昇するのに約80年を要したスウェーデンと比べて、日本は約25年足らずで達しており、高齢化のスピードという意味では群を抜いて早いだけに、高齢化問題はより深刻です。ですから両国の年金や高齢者福祉政策をそのまま我が国に導入するわけにはいかないでしょう。

 このように我が国と単純に比較することはできない北欧の両国ですが、福祉先進国と言われる両国でも介護施設の不足、高齢者の痴呆の問題など、我が国とも共通する新たな問題を数多く抱えているだけに、ヒントになることは多いと思われます。特に、「高齢者がいかに生き生きと尊厳のある生活を送ることができるようにするか」という介護の質という問題がこれからクローズアップされますが、こうした問題はたとえ文化の違いはあれ、スウェーデン人も日本人も同じ人間として共通の課題があるはずです。

 在宅サービスを基本とすることで高齢者が活力ある生活を送れるようにするアプローチや、介護サービスの質を向上させるために職員の研修プログラムの充実に努力していることなどを北欧の両国で見てまいりましたが、こうした取り組みは、我が国の高齢者介護施策と同じ方向を目指していますし、具体的な取り組みを参考にして、どんどん吸収していく必要があると感じました。また、両国のような規模の小さな国でも介護サービスの運営は住民に近い地方自治体が行っています。両国の10倍以上の人口規模を持つ我が国では、地方自治体が地域の介護事業の運営で中心的役割を担う必要性はますます高いと感じました。

 我が国の介護保険法の見直しはこれから本格化します。厚生労働行政の責任者として、また国政を預かる国会議員として、今回の経験を生かして参りたいと考えております。





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