国際テロに対して日本が取るべき行動とは

  まず初めに、この度米国において発生した同時多発テロに関し、心無きテロリストによる卑劣な行為に対して強い憤りを覚えると共に、米国国民及び被害者の方々に対して、心よりお見舞い申し上げます。

 9月11日、ニューヨーク・マンハッタンのWTC−世界貿易センタービルは、今回のテロにより一瞬のうちに瓦礫と化し、5,000人近い死者及び行方不明者を出しました。まるで映画のワンシーンのようなリアルな映像を、信じがたくも現実のものとして目にした私は、大変なショックを受けました。

 私は30年余り前、マンハッタンにあるコロンビア大学の学生として、ニューヨークで生活していました。WTCはその当時、世界一のビルを造るのだというアメリカ人の大変な意気込みのもと、エンパイアステートビルよりも更に高いツインタワーとして建設中でした。ほぼ出来上がったその前で記念写真を撮りましたが、WTCはまさにアメリカ文化の象徴でもあったわけです。   「文明の衝突」という言葉がありますが、心無いテロリストにより、WTCは一瞬のうちにその誇りと共に潰されました。アメリカ人が怒り狂うのも無理はありません。我々日本人に置き換えて考えると、まるで皇居が爆撃されたかのように、日本の象徴が一瞬のうちに無くなってしまったような感覚なのではないかと思います。

 甚大な被害も去ることながら、今最も大切な問題は、どのように対処するかということです。ブッシュ大統領は「これはまさに戦争であり、戦争に対しては戦争でやり返さなければならない」ということで、ご存知のようにタリバン政権に対する空爆を開始し、やがては地上軍の派遣ということも話題になっている状況です。テロリストをなくさなければ、我々自身の生活にも安全はありません。しかしその手段として、どのような方法があるかということについては、極めて慎重に考えなければならないと思います。

  我々は今回のテロ対策について、小泉首相のもと、我が国として取るべき行動を独自に判断いたしました。これは非常に重要なことですが、それと同時に、世界やアメリカが日本に何を求めているかを良く考えなければならないと私は思います。パウエル国務長官はしばしば「日本は憲法に基づいてできる範囲のことをしてくれれば良い」と言っておられます。まさにこの言葉こそ日本の立場を十分に考え、そしてその結果日本が取った行動は、世界のために大変役立つと評価してくれていると思っています。

 例えば12年前の湾岸戦争の時、日本は1兆3,000億円を超すお金を出しました。お金だけ出して人を出さなかったために、世界は日本を評価していないというマスコミの論評もありますが、私は決してそうではないと思います。今日の世界各国の中で、これだけ巨額のお金を出せる国は、日本をおいて他にはそう沢山ないのです。従ってこれからも「世界が望んでいるものは何か」を良く考えながら、このような問題の対処を決めるのが政治の責任だと考えています。  ですから今回のテロ撲滅の米英の動きに対して、日本がどのような対応をするのが良いかを議論した結果、結論としてテロ対策特別措置法を作り、これにより従来の周辺事態法とは別の次元での対応を決めました。日本は今これを遂行し、世界各国の期待と信頼に応えようとしているわけです。

  今回のテロ、そして対アフガン戦争はいつまで続くのでしょうか。炭疽菌の問題など、平和であるべき人々の日常生活を、不安と恐怖が蔓延するような社会にしてはなりません。このようなテロを撲滅し、そして皆がより安全に安心して暮らせる社会にするためには、社会の構成員全員の努力が必要であろうと思います。21世紀は国対国の戦争ではなく、このようなテロ行為や一部の野蛮なテロ支援国家、或いは宗教戦争等に対し、多面な安全を求める対策が全世界に求められる時代になると思います。

  いずれにしても、今回の同時多発テロ問題に立ち向かう日本の基本姿勢としては、世界規模のテロを防ぐ国際的な問題と捉えており、その中には日本も含まれるという認識です。ただしアメリカにとっては、国際的な問題であると同時に国内の問題でもあります。単一民族で構成される日本とは異なり、多民族国家であるアメリカが抱える問題は大きなものです。日本とアメリカは軍事同盟を結んでいるとはいえ、国情が違います。日本においては、国内問題になる点とそうでない点を十分に見極め、自主的な判断に基づいた対応が急がれます。まず、日本の本当の安全と、日本国民の幸せを最優先に考えた判断が必要であると考えています。



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