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●改革を推し進める原動力とは 小泉内閣の掲げる改革の方向は概ね正しいと思いますが、その成功の前提条件として、どうしても解決しなければならない問題があるように思われます。それは、改革を推し進める原動力となる何か(=Something)が必要だということです。 思い起こせば20年前、イギリス病にかかった英国が大変な不況に悩み、その打開の道を、若きサッチャーがいわゆるサッチャーリズムを提唱し、英国を没落の危機から救いまいました。「ゆりかごから墓場まで」と世界的に有名になった高度の福祉政策を徹底したこともその原因の一つですが、働いても働かなくても国家がその生活を保証するということは、少なくとも国民の働く意欲を減少させたことに間違いありません。 国営企業の賃金は高く、また社会的にも結婚せずに子供をもうけ、生まれた子供を国営の託児所に預けるといった家庭の崩壊がまま見られる状況を直視して、「国営企業の民営化と働く人へより多くの収入を」といったメッセージを送り、イギリスを再び活力ある今日の状態に回復させたのです。その背景には、「このままでは国全体が大変なことになる」という国民全体の切迫感があり、これがサッチャー革命を実現させる原動力になったのです。 また米国の場合は、この10年間大変な好況を享受してきました。その背景には、クリントンの改革が立派であったということよりも、1989年の「ベルリンの壁」崩壊と共に、強力な軍事競争の敵対国ソ連が崩壊し、巨額の国家予算を軍備に向ける必要が無くなったということがありました。その資金と技術を全面的に民需に転用し、これによりアメリカ経済の内需を喚起し、自然と好況に向っていきました。そのタイミングで、湾岸戦争で勝利したジョージ・ブッシュを破ってビル・クリントン登場しました。クリントンは民主党らしく、福祉の充実を前面に掲げ、紆余曲折はあったものの、大体の改革に成功し、かつ財政赤字を解消するなど、多方面の改革を推し進めました。これらの改革が成功した背景には、たまたま景気が良くなった時代に、運良く政権に就いていた、という幸運が手伝ったことは間違いありません。 小泉内閣も、7つの骨太の改革はそれぞれ大切な事ではあるけども、その実現には英米両国に見られるような、改革を推し進めることについての国民的合意と、そのための痛みに耐えられる主として経済的な環境作りが必要です。 私はその為の方策として、人々が職を変え新しい職場でも希望を持って働ける環境作りが是非とも必貢だと考えています。今日の不況を打開するには、官民とも無駄を省き経営を合理化することが大切ですが、それだけでは景気は良くなりません。ポイントは土地と株価を上げることだと考えています。 まず土地対策では、土地税制を緩和します。しかし年来の主張にもかかわらず、譲渡課税等は必ずしも低くなってはいません。また都市再生等、いろいろな提案がなされていますが、すぐに土地の需要が上がってくるとは思えません。そこで、株価対策です。現時点で11,000円台という水準は、まさに危機的状況です。本年三月に三和総合研究所の原田和明氏に、私の政経勉強会「東京21フォーラム」で講演をして頂いた時にも、平均株価は15,000円台が必要だとの話でした。今は小泉ブームに浮かれているけれども、はたと気が付いた時には、水が足元まで上がってきているといった状態にならないようにと思っています。 今の日本は、企業には金が無く、個人は約1,400兆円もの金融資産を持っています。しかし個人の金融資産については、金利が安く運用先に困って滞留しているのが現状です。消費にも向かないこの金融資産を株式市場に向けることによって株価を上昇させることが、最も手っ取り早い対策だと考えています。このため私は、「期間を限定して、株式の譲渡益に税金を掛けない」という思い切った改革を主張し続け、ようやく今春の国の緊急経済対策の検討項目にこれが取り入れられました。しかし関係省庁との調整の結果、100万円までとの制約が加えられ、いささかがっかりしているところです。 諸外国の中でも銀行資本の強いドイツは、株の譲渡益に税金を掛けない方策を採っています。しかも、初めて株を買った人などには、小額の個人であれば政府が補助金まで出しています。このように、国策として株価の維持に真剣に取り組んでいる国もあるのです。 株価が下がれば不良債権は更に増え、個人の所得は減少し、消費がますますダウンします。この悪循環を断ち切り、そしてまた小泉政権の掲げる7つの骨太の改革実現のために、株価の上昇と新しい仕事にチャレンジできる環境や、中小企業や一般国民にまで届く大幅な金融緩和処置が必要です。改革には痛みが伴うもので、国民にそれを耐えてもらうためにも必要です。今まさに、それを改革推進のSomethingとして、真剣に対策を考える時が来たと思っております。 |